「顧客がどのような経路で購買を決定するのかが見えない」「営業とマーケティングの連携がうまく取れていない」「せっかく作ったコンテンツが顧客の検討プロセスに合っていない」——BtoB営業・マーケティング担当者が共通して抱えるこれらの悩みを解決するツールがカスタマージャーニーマップです。
特にBtoB領域では、購買の意思決定に複数の関係者が関与し、検討期間も3ヶ月〜1年以上に及ぶことが珍しくありません。この複雑な購買プロセスを可視化し、各フェーズで最適なアプローチを設計するためにカスタマージャーニーマップが重要な役割を担います。
本記事では、カスタマージャーニーマップの基本概念からBtoB特有の設計ポイント・実践的なテンプレート・GBase GTMとの連動方法まで、すぐに実践できる内容を体系的に解説します。
1. カスタマージャーニーマップとは?基本概念とBtoBでの重要性
カスタマージャーニーマップの定義
カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品・サービスを知ってから購買・利用・継続(または離脱)に至るまでの一連の体験プロセスを可視化したフレームワークです。
「ジャーニー(旅)」という言葉が示す通り、顧客の購買体験を点ではなく、一連の流れ(旅)として捉えます。各フェーズで顧客が何を考え・何を感じ・何を行動しているかを整理することで、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの各チームが連携して最適なアプローチを設計できます。
BtoB営業でカスタマージャーニーマップが重要な3つの理由
理由①:複数の意思決定者が関与する
BtoB購買では、担当者・課長・部長・CFO・IT部門など複数の関係者が意思決定に関わります。それぞれの関心事・懸念点・役割が異なるため、単一のジャーニーではなく、複数のステークホルダーの視点を組み合わせたマップが必要です。
理由②:購買サイクルが長い
BtoCの数分〜数日に対し、BtoBの購買サイクルは3ヶ月〜1年以上に及ぶことが一般的です。長い検討期間の中で、顧客のニーズや優先度が変化することもあり、各フェーズに合わせた継続的なアプローチが必要です。
理由③:オンラインとオフラインが複雑に絡み合う
BtoB購買の意思決定の70%以上はサプライヤーと接触する前に完了するとも言われています。Webサイト・ホワイトペーパー・SNS・口コミ・展示会・営業訪問など、多様なタッチポイントが複雑に絡み合うため、全体像の把握が重要です。
2. BtoCとBtoBのカスタマージャーニーマップの違い

カスタマージャーニーマップはもともとBtoCで発展したフレームワークですが、BtoBへの適用には重要な調整が必要です。
| 比較項目 | BtoC | BtoB |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 1〜2名(個人・家族) | 複数名(担当・課長・役員・IT等) |
| 購買サイクル | 数分〜数日 | 3ヶ月〜1年以上 |
| 検討の深度 | 感情・直感・口コミ重視 | ROI・リスク・実績・機能重視 |
| 情報収集方法 | SNS・レビューサイト・広告 | Web検索・ホワイトペーパー・展示会・紹介 |
| ジャーニーの複雑さ | 比較的シンプル | 複雑(複数のステークホルダー) |
| フェーズ数 | 3〜5段階 | 5〜8段階 |
| 感情の揺れ | 大きい(衝動買いあり) | 小さい(論理的判断が主) |
| 導入後の関係 | 購買で完結することが多い | 継続関係(CS・更新・アップセル)が重要 |
BtoBでは特に「複数のステークホルダーの視点を統合する」「論理的な意思決定プロセスを尊重する」「購買後の継続利用まで含めた設計をする」の3点が重要です。
3. カスタマージャーニーマップの基本構成要素5つ
BtoB営業向けのカスタマージャーニーマップには、以下の5つの構成要素を含めることを推奨します。
構成要素①:フェーズ(Phase)
顧客の購買プロセスを段階的に分割したものです。BtoBの基本フェーズは以下の通りです。
- 認知(Awareness):課題を認識し、解決策を探し始める
- 情報収集(Consideration):複数のソリューションを比較検討する
- 評価・選定(Evaluation):候補を絞り込み、詳細な評価を行う
- 購買(Purchase):最終決定・契約・導入
- 活用・継続(Retention):製品・サービスを活用し、成果を実感する
- 拡大・推奨(Advocacy):アップセル・クロスセル・他者への紹介
構成要素②:顧客の思考・行動(Thinking & Actions)
各フェーズで顧客(各ステークホルダー)が何を考え、何をしているかを記述します。担当者・決裁者・利用者でそれぞれ異なります。
構成要素③:顧客の感情(Emotions)
各フェーズで顧客が感じる感情・不安・期待を記述します。BtoBでは「リスクへの不安」「ROIへの期待」「社内合意への悩み」などが典型的です。
構成要素④:タッチポイント(Touchpoints)
顧客と自社が接触するすべての接点を洗い出します。Webサイト・ブログ記事・営業電話・デモ・提案書・展示会・SNS・メールなど、フェーズごとに整理します。
構成要素⑤:課題・改善機会(Pain Points & Opportunities)
各フェーズで顧客が感じる不満・障壁・改善の余地を特定します。これが次のアクション(コンテンツ制作・プロセス改善・ツール導入)の起点になります。
4. BtoB向けカスタマージャーニーマップの作り方5ステップ
ステップ1:ペルソナを設定する
カスタマージャーニーマップは「誰のジャーニーか」を明確にすることから始まります。BtoBでは以下の複数のペルソナを定義します。
- 担当者ペルソナ:実際に製品を使う現場担当者
- 評価者ペルソナ:選定・評価を担当する中間管理職
- 決裁者ペルソナ:最終的な購買承認を行う経営層・役員
ヒアリングを通じて実際の顧客の声を収集し、データに基づいたペルソナを設定することが重要です。
ステップ2:購買フェーズを定義する
自社のビジネスモデル・製品・顧客特性に合わせて購買フェーズを設計します。一般的な6フェーズ(認知→情報収集→評価→購買→活用→推奨)をベースに、自社固有のプロセスを追加します。
ファネルの考え方と連動させることで、各フェーズの転換率を定量的に管理できます。
ステップ3:各フェーズで顧客の思考・感情・行動を記録する
既存顧客へのインタビュー・商談記録の分析・営業担当者へのヒアリングを通じて、各フェーズでの顧客の実態を収集します。
よくある調査手法:
– 既存顧客への購買体験インタビュー(5〜10社)
– 失注顧客へのフィードバックインタビュー
– 商談メモ・ヒアリングシートの定性分析
– WebアナリティクスによるWeb行動データの定量分析
ステップ4:タッチポイントを洗い出し、ギャップを特定する
各フェーズで顧客が実際に使っている情報源・接触チャネルをリストアップし、自社が対応できているタッチポイントと対応できていないギャップを特定します。
ステップ5:改善アクションを優先順位付きで設計する
特定したギャップに対して、コンテンツ制作・プロセス改善・ツール導入などの改善アクションを設計します。インパクトと実行難易度でマトリクスを作り、優先順位を決めます。
5. BtoB営業で活用できるテンプレート3種類(認知・比較検討・購買後)

BtoB営業では、購買プロセスの段階によって顧客の関心事と有効なアプローチが大きく異なります。以下の3つのフェーズ別テンプレートを参考にしてください。
テンプレート①:認知フェーズのジャーニーマップ
| 項目 | 担当者(ユーザー) | 評価者(課長) | 決裁者(役員) |
|---|---|---|---|
| 主な行動 | 課題を検索・情報収集 | 部下の課題相談を受ける | ——(この段階では未関与) |
| 主な思考 | 「この課題、ほかはどう解決してる?」 | 「予算と工数をかけるほどの課題か?」 | —— |
| 感情 | 不満・好奇心 | 懐疑的 | —— |
| 有効なタッチポイント | SEOブログ・SNS・口コミ | ——(情報が届いていない) | —— |
| 改善機会 | 課題キーワードでの検索流入強化 | 課長層向けのROI資料作成 | —— |
認知フェーズで効果的なコンテンツ:
– 課題認識型のSEOブログ記事
– 業界トレンドレポート・ホワイトペーパー
– SNSでの課題提起型の投稿
テンプレート②:比較検討フェーズのジャーニーマップ
| 項目 | 担当者 | 評価者 | 決裁者 |
|---|---|---|---|
| 主な行動 | 複数製品のデモ依頼・機能比較 | 評価基準の設定・チームへの指示 | 大まかな予算の確認 |
| 主な思考 | 「機能と使いやすさで選びたい」 | 「導入コストと効果を説明できるか?」 | 「投資対効果は?競合他社は使ってるか?」 |
| 感情 | 期待・情報過多による混乱 | 責任感・慎重さ | 関心・リスク回避 |
| 有効なタッチポイント | 製品デモ・無料トライアル・機能比較表 | 事例資料・ROI計算シート | 経営者向け事例・業界動向レポート |
| 改善機会 | デモ後のフォローアップ改善 | 評価者向けのROI資料強化 | 役員向けのエグゼクティブサマリー作成 |
比較検討フェーズで効果的なコンテンツ:
– 詳細な機能比較表
– 具体的な導入事例(業種・規模別)
– ROI計算ツール・シミュレーター
– 無料トライアル・POCプログラム
テンプレート③:購買後(オンボーディング・継続)フェーズのジャーニーマップ
| 項目 | 担当者(利用者) | 評価者(管理者) | 決裁者(オーナー) |
|---|---|---|---|
| 主な行動 | 製品の設定・操作習得 | チームへの展開・管理 | 投資対効果の確認 |
| 主な思考 | 「使いこなせるか不安」「思ったより使いやすい」 | 「チームに浸透させられるか」 | 「コストに見合っているか」 |
| 感情 | 不安→習熟への期待 | 責任感→安堵 | 期待→満足または不満 |
| 有効なタッチポイント | オンボーディングセッション・チュートリアル動画 | 管理者向けダッシュボード・月次レポート | QBR(四半期レビュー)・ROIレポート |
| 改善機会 | オンボーディングの改善・チュートリアル充実 | 管理機能の強化 | 定期的なビジネスレビューの実施 |
購買後のフェーズはナーチャリングと連動させ、更新・アップセル・紹介につながる関係を維持することが重要です。
6. カスタマージャーニーマップをGBase GTMと連動させる

カスタマージャーニーマップは作成するだけでは意味がありません。実際の営業活動に組み込み、顧客の購買フェーズに合わせたアプローチを実行することが重要です。GBase GTMはこの実行をAIで支援します。
フェーズに合わせたターゲティング
GBase GTMのAI企業検索を使い、現在どの購買フェーズにいる企業かを推測したターゲティングができます。採用情報・資金調達・プレスリリースなどのシグナルを組み合わせることで、「認知フェーズ」「評価フェーズ」の企業を区別したアプローチが可能です。
インテントセールスの考え方を取り入れることで、購買意欲の高い企業を優先的にアプローチできます。
Deep Researchで顧客フェーズを深掘りする

GBase GTMのDeep Research機能は、ターゲット企業の最新ニュース・採用状況・事業課題を自動収集します。この情報を活用することで、「その企業が今どの課題フェーズにあるか」を推測し、カスタマージャーニーマップ上の位置を特定できます。
フェーズ別のAIメール生成
カスタマージャーニーマップで定義したフェーズ別のメッセージングを、GBase GTMのAIメール生成機能で実行します。認知フェーズの企業には「課題提起型」のメール、評価フェーズの企業には「比較・実績型」のメールを、パーソナライズされた形で自動生成できます。
AIスコアリングでフェーズ移行を可視化
GBase GTMのAIスコアリングにより、各商談案件がジャーニーマップ上のどのフェーズにいるかを数値化します。スコアの変化を追跡することで、フェーズ移行のタイミングを把握し、適切なアクションを取れます。
7. よくある失敗と対処法:形骸化させないコツ
カスタマージャーニーマップは、作成して終わりになるケースが非常に多いです。実際に営業・マーケティング活動に活用し続けるための注意点を解説します。
失敗①:思い込みだけで作る
失敗パターン: 実際の顧客調査をせず、社内の思い込みだけでジャーニーマップを作成する。
対処法: 最低5〜10社の顧客インタビューを実施し、実際の購買体験を基に作成します。特に失注顧客からのフィードバックは、思い込みを崩す重要な情報源です。
失敗②:精緻に作りすぎて使われない
失敗パターン: 10ページにわたる詳細なジャーニーマップを作成し、複雑すぎて現場が使いこなせない。
対処法: 「1枚に収める」を原則にシンプルに作成します。詳細が必要なフェーズだけを深掘りし、全体の俯瞰図を常に見えるようにします。
失敗③:一度作って更新しない
失敗パターン: プロジェクトとして作成したが、市場変化・製品変更に追随して更新されない。
対処法: 四半期に1回の定期レビューをスケジュールに組み込みます。新しい顧客インタビューの結果・商談データを定期的にフィードバックして更新します。
失敗④:営業とマーケティングが別々に使う
失敗パターン: マーケティングが作ったジャーニーマップを営業が知らない、または使っていない。
対処法: ジャーニーマップは営業・マーケティング・カスタマーサクセスが共同で作成し、共通言語として全チームで使用します。インサイドセールスチームとの連携を強化することが特に重要です。
8. カスタマージャーニーマップ活用事例:IT/SaaS企業の場合

事例:営業効率を改善したSaaS企業の取り組み
あるSaaS企業では、成約率が伸び悩む課題を抱えていました。カスタマージャーニーマップを作成したところ、以下の問題点が明らかになりました。
発見した問題:
– 評価フェーズで担当者向けのデモは充実していたが、決裁者向けの資料が不足していた
– 購買後のオンボーディングが不十分で、3ヶ月以内の解約率が高かった
– 競合比較の段階でROI計算ツールがなく、担当者が社内稟議を通しにくかった
取った改善アクション:
1. 決裁者向けのエグゼクティブサマリー(1枚)を作成
2. ROI計算シートを作成し、担当者が社内稟議に使えるようにした
3. オンボーディングプログラムを90日間に拡張
結果:
– 決裁者が関与した商談の成約率が大幅に向上
– 購買後3ヶ月以内の解約率が低下
– 担当者からの「使えた」という声が増加
GBase GTMとの組み合わせ効果
上記の事例企業がGBase GTMを導入したところ、以下の効果が追加されました。
| 指標 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 商談化率 | 5% | 12% |
| 初回商談の質 | 課題仮説なし | Deep Researchによる仮説あり |
| 商談準備時間 | 2時間/社 | 15分/社 |
| フォローアップメール作成時間 | 30分/通 | 5分/通 |
マーケティング戦略との連動を意識し、カスタマージャーニーマップで特定した各フェーズの課題をGBase GTMのAI機能で解決するアプローチが有効でした。
9. まとめ:カスタマージャーニーマップで営業とマーケの壁をなくす
カスタマージャーニーマップは、BtoB営業における複雑な購買プロセスを可視化し、営業・マーケティング・カスタマーサクセスが共通言語で動くための重要なフレームワークです。
カスタマージャーニーマップ作成・活用のポイントまとめ:
- 実際の顧客調査に基づいて作成する:思い込みを排除し、データと顧客の声で構築する
- 複数のステークホルダーを設計に組み込む:担当者・評価者・決裁者それぞれの視点を持つ
- シンプルに保ち、定期的に更新する:複雑にしすぎず、四半期ごとにレビューする
- 営業・マーケ・CSが共同で活用する:共通言語として全チームに浸透させる
- AIツールと連動させ実行に落とし込む:設計から実行へのギャップをツールで埋める
GBase GTMのAI企業調査・AIスコアリング・AIメール生成機能は、カスタマージャーニーマップで設計したアプローチを実際の営業活動で効率的に実行するための強力なツールです。500万社以上の日本企業データと組み合わせることで、各フェーズに最適なアプローチを、スピーディかつパーソナライズされた形で展開できます。
FAQ
Q1. カスタマージャーニーマップとバイヤーズジャーニーの違いは何ですか?
A. バイヤーズジャーニーは顧客の購買プロセスを「認知→検討→決断」の3段階で捉えるシンプルなフレームワークです。カスタマージャーニーマップはより詳細で、各フェーズでの顧客の思考・感情・行動・タッチポイントを可視化した包括的なツールです。BtoB営業ではカスタマージャーニーマップのほうが実践的です。
Q2. カスタマージャーニーマップを作成するのにどのくらい時間がかかりますか?
A. 初版の作成には1〜2週間程度が一般的です。顧客インタビュー(5〜10社)に1週間、マップの作成・チームでのレビューに1週間が目安です。完璧を求めず、まず「使えるレベル」で完成させ、その後継続的に改善することを推奨します。
Q3. カスタマージャーニーマップは何人くらいで作るのがよいですか?
A. 営業・マーケティング・カスタマーサクセス・製品担当を含む4〜8名程度のクロスファンクショナルなチームで作成することが理想的です。一人や単一部門だけで作ると視野が狭くなり、実態とかけ離れたマップになりがちです。
Q4. BtoB企業で複数の製品・サービスを提供している場合、ジャーニーマップは製品ごとに作るべきですか?
A. 製品・ターゲット顧客が大きく異なる場合は、製品ごとに作成することを推奨します。一方、ターゲット顧客が共通している場合は、1つのジャーニーマップに複数製品の情報を組み込むことも可能です。まずは主力製品・最重要ターゲット向けの1枚から始めることをおすすめします。
Q5. GBase GTMはカスタマージャーニーマップのどのフェーズで最も効果的ですか?
A. GBase GTMは特に「認知フェーズ(ターゲット選定)」「評価フェーズ(企業調査・提案準備)」「フォローアップフェーズ(メールアプローチ)」で威力を発揮します。500万社以上のデータから最適なターゲットを発見し、Deep Researchで課題仮説を構築し、AIメール生成で個別化されたアプローチを効率的に実行できます。